リスクベース認証がサイバー攻撃からビジネスを守る5つの方法
企業は常にサイバーセキュリティを強化する方法を模索していますが、こうした取り組みによりアクセシビリティや生産性が犠牲になる可能性があります。
例えばセキュリティに対するゼロトラストのアプローチは、サイバー攻撃からビジネスを守るのには優れていますが、UX(ユーザーエクスペリエンス)の障壁となる可能性があります。
リスクベース認証は、継続的なリスク評価を利用してユーザーのログイン認証情報とアクセス許可を決定するインテリジェントな検証システムです。
これは、MFA(多要素認証)のような静的で画一的なソリューションではなく、信頼できるユーザーのアクセスを合理化する方法を提供するリスクベースの認証方法です。
そこで本記事では、リスクベース認証とは何かを見ていき、それをサイバーセキュリティの脅威からビジネスを守るのにどのように活用できるかについて解説します。
Table of Contents
リスクベース認証の仕組み
リスクベース認証は、ユーザーが定められた、継続的かつ動的なリスク評価に基づいて、組織システムへのアクセスを決めます。
仕組みは以下の通りです。
- ユーザー(従業員または顧客)がログイン認証情報を入力する。
- リスクベース認証システムが評価モードに入り、ユーザーの場所、デバイス、従業員のアクセスレベルなどのリスク要因を調べる。
- リスクベース認証が、このユーザのインタラクションが高リスクか低リスクかを判断する。
- そのインタラクションが高リスクの場合、該当するユーザーに認証要求が送信され、ユーザーの身元を確認する追加の認証方法が提供される。
- 低リスクのアクティビティは安全と判断され、ユーザーは MFA(多要素認証)を提供せずにアクセスを許可される。
- リスクベース認証プロセスはこれで終わりではなく、ユーザーとのやり取りを通じて、不審な行動の兆候がないか、ユーザーの行動が継続的に評価され、各ユーザーのリスクプロファイルが構築される。ユーザーは、継続的なリスク評価に基づいて、いつでも再ログインを促されたり、追加の認証を求められたり、アクセスをブロックされる。
MFA は、リスクベース認証の重要な側面です。
リスクベース認証のポイントは、ユーザーのアクセシビリティを上げながら、組織のセキュリティを強化することです。
リスクの低いやり取りを行う信頼できる従業員は、職務を遂行するのに追加の検証手順を踏む必要はありません。また、顧客はアカウントへのアクセスが通常の場所やデバイスからだと、より使いやすい体験になります。
リスクベース認証は、インテリジェントなリスク評価を使って、アクセスを合理化してコントロールしてくれるのです。
リスク評価プロセスは、ビジネスによってユーザーが定められ、ML(機械学習)と予測モデルを使ってリアルタイムで適応されます。
ユーザー定義の危険因子には、以下のようなものが含まれます。
- 従業員の社内でのアクセスレベル:多くの場合、組織は情報の機密性のレベルに応じてアクセスコントロールを設定する。
- ログインを試行した IP アドレスと地理的な場所:企業では、機密情報へのアクセスは、現場や職場ネットワークからのみ許可している場合がある。
- ユーザーがログインを試みるデバイス:従業員にとっては、「会社支給のノートパソコン」と「個人所有のノートパソコン」で、顧客にとっては、「通常とは異なるデバイス」という意味である可能性がある。
- 複数回のログイン試行失敗:組織は、一定回数のログイン試行失敗でアクセスをブロックすることができる。
ユーザーのリスク要因が定められた後、リアルタイムのモニタリングによって 、おそらく AI が認証プロセスを引き継ぐことになります。リスクベース認証は、機械学習アルゴリズムを使って、過去のユーザー行動から学習し、将来の行動を予測します。
例えば、ある社員がオペレーションセンター・ソリューション・プロバイダーのビジネスポータルにログインしようとしている場合に、その記録に複数のセキュリティインシデントがあれば、システムはその社員がアクセスしようとしている情報を見て、その機密性を判断し、そのユーザーを「リスク」とみなすかもしれません。
リスク基準が評価されると、リスクベース認証は、ユーザーに MFA を求めるべきか、システムから完全にロックアウトすべきかを決定します。
TeamPassword のようなパスワードマネージャーでは、リスクベース認証が使われています。それでアカウント管理者は、ユーザーロールを設定することで、各従業員のアクセスレベルの設定や、ユーザが閲覧できる情報の制限ができ、ユーザーを特定のレコードグループに割り当てることで、そのユーザーがアクセスできるアカウントを制限することもできます。
パスワード管理者は、多くの場合、バックエンドの不正分析を使ってユーザーアカウントのアクセスを監視します。例えば、最近のログイン試行が地理的に不可能であったり、未認識のデバイスから試行されたりして、ログイン試行が高リスクであると AI が判断した場合、ユーザは二次的な MFA コードの入力を求められるかもしれません。
リスクベース認証のポイントは、組織のサイバーセキュリティを強化すると同時に、ユーザーにとってより合理的で利用しやすい体験を作り出すということです。
リスクベース認証がサイバー攻撃からビジネスを守る方法5つ
さて、リスクベース認証について理解したところで、それが組織にもたらす利点を見てみましょう。
1.ビジネス全体のサイバーセキュリティの強化
多くの場合、サイバーセキュリティインフラの最も弱い部分はそのユーザーです。
IBM の「2023 Cost of a Data Breach Report(2023年 データ侵害のコスト報告書)」によると、フィッシング攻撃は組織にとって最も一般的な攻撃ベクトルであり、全データ侵害の16%を占めています。
また、フィッシング攻撃は、ランサムウェア攻撃に次いで、企業にとって2番目にコストのかかるサイバー脅威でした。
この問題の解決策として MFA(多要素認証)が生まれましたが、MFA は、パスワードのみのセキュリティと同じ脆弱性を抱えたまま、ユーザーに摩擦を生み出す可能性があります。
リスクベース認証で、特にユーザーのデータと動作に基づいた追加のセキュリティ層ができます。
リスクベース認証が弱点に真正面から取り組み、それで組織はリスク要因を設定することできるようになると同時に、ML(機械学習)の活用によってユーザーの行動に基づいた学習、予測、適応ができるようになります。
ユーザーの行動を学習ツールとして活用することで、リスクベース認証は組織全体により強力なサイバーセキュリティ環境を作り出してくれるのです。
2.インテリジェントなユーザーアクセスコントロールの提供
アクセス管理は、企業の内部サイバーセキュリティにとって重要です。
アクセスコントロールは、ユーザーの権限と情報の機密性に基づいて、どの従業員にどのツールへの安全なアクセスを許可するかを管理します。
リスクベース認証は、認証時にこのようなリスク要因を考慮することで、アクセスコントロールを強化します。
例えば、低セキュリティのアクセス権を持つカスタマーサポートの従業員が顧客の財務データにログインしようとした場合、追加のセキュリティ層を提供するよう求められたり、アクセスをブロックされたりする可能性があります。これは通常、機密情報を守るために機能します。
ただ、その従業員が顧客の問題の迅速な解決のためにこのデータが必要な場合、このセキュリティ層によって、その従業員の職務遂行能力に障壁が作り出されていることになります。MFA を提供する術が手元になかったり、アクセスを全面的に拒否されたりするかもしれません。
そうなると、カスタマーサポートのプロセス全体が止まってしまい、それにより顧客の機嫌を損ね、コールセンターのサービスレベルにも影響を及ぼす可能性があります。
そのため、リスクベース認証は、以下を判断するといいでしょう。
- 従業員の位置情報
- ログイン元デバイス
- 従業員の社内での役割
- 従業員のユーザーアクセス履歴
- 通常の権限以外で情報にアクセスした際の従業員の過去の行動
リスクベース認証システムは、ユーザがこのようなリスク基準をすべてクリアしていると判断し、追加の障壁なしに機密情報へのアクセスを許可する可能性があります。
多くの場合、サイバー攻撃に対する防御の第一線は、アカウントを保護するパスワードです。だからこそ、TeamPassword のようなチーム用に構築された高度なパスワードマネージャーは、あらゆるビジネスセキュリティプランに非常に重要なのです。パスワードマネージャーで、ユーザーはアクセスが必要なユーザーしかアクセスできないように、各アカウントへのユニークで強力なパスワードの作成や、ログイン認証情報の共有やアクセスの制限などができます。
組織のシステムへのアクセスは、万能のソリューションではありません。リスクベース認証により、より合理化されたインテリジェントな認証システムが作成されるのです。
3.従業員の UX 向上
従業員の経験を改善することは、サイバーセキュリティに対する意識の重要な部分を占めます。
サイバー攻撃の防止は、全社的な取り組みであり、初級社員からサイバーセキュリティの専門家、経営陣に至るまで、全員が共通の目標に向かって努力するということです。
システムを導入することで、従業員の仕事環境が改善されれば、全員の足並みを揃えやすくなります。
インテリジェントなアクセスコントロールで、システムやツールへのアクセスが合理化され、それで従業員の業務遂行に不要な障壁が取り除かれます。それによって、イライラや無駄な時間がなくなり、セキュリティは最優先にされながら、従業員のやる気と生産性は上がります。
4.ビジネス独自のニーズに合わせた高度なカスタマイズ性
各企業のサイバーセキュリティのニーズはさまざまですが、リスクベース認証は柔軟性に富んでいます。
組織は、認証要件、業界標準、従業員のアクセスコントロール、ユーザーの役割、レガシー(旧式)アプリケーションのモダナイゼーションの有無、扱うデータの機密性などに基づいて、独自のリスク要因を設定することができます。
先に述べたように、サイバーセキュリティは画一的なソリューションではありませんが、リスクベース認証は、組織独自のニーズに合わせて柔軟に対応することができます。
5.顧客の安全を守りながら、より良い顧客体験の提供
MFA(多要素認証)が一般的になったとき、それが脆弱なパスワード、フィッシング攻撃、サイバーセキュリティ侵害の増大という問題に対する完璧な解決策であるかのように思われました。
ただ残念ながら、MFA にイライラする場合もあります。MFA はいい解決策ですが、実装が不便なこともあります。
例えば、顧客としてショッピングアプリや Web サイトにログインするのは面倒くさいものです。顧客がログイン情報を入力すると、「セキュリティコードが携帯端末に送られました」という通知がポップアップ表示されます。
そして、顧客は「携帯が部屋の反対側にある」や、「番号が変わって個人情報を更新するのを忘れていた」ことに気づいたり、長い数字の羅列を入力しようとしながら携帯の画面とアプリを操作するのに、実はイライラしたりするものです。
これは顧客にとってはフラストレーションがたまります。
MFA に不満を抱く顧客は、余計なセキュリティステップをすべて無効にしてしまうかもしれません。そうなると、これで顧客や企業は金銭的損失やデータ損失のリスクに晒されることになります。
そこで、より良いシステムを作るのにリスクベース認証が出てくるわけです。
顧客のログインが疑わしいかどうかを判断するのに、顧客の場所(いつもの場所と違うか)、ユーザーのデバイス(今までログインしたことのないデバイスか)などのリスク要因を考慮します。それでログインが安全であると判断された場合、顧客は MFA を免れます。
これにより、より合理的な顧客体験が生み出されるというわけです。
また、リスクベース認証で、MFA を設定するための追加デバイスや経路を持たない顧客や、MFA を快適に利用するための技術リテラシーを持たない顧客を保護することもできます。
リスクベース認証で、パスワードのセキュリティと適切な認証は重視され、全顧客にとってより利用しやすいエクスペリエンスが生み出されるのです。
リスクベース認証がサイバーセキュリティにとって非常に重要な理由
サイバーセキュリティは現代のビジネス運営に不可欠です。なので、職場の Wi-Fi ネットワークを利用する小規模企業から、ソフトウェア、SNS アカウント、リモートワーカーを抱えるグローバル企業まで、サイバーセキュリティを無視した場合の代償は大きくなります。
また、サイバー攻撃は、企業に経済的、評判的、法的な損害を与える可能性があることから、サイバーセキュリティの強化のためにできることは、すべて自身のビジネスにおける成功につながります。
リスクベース認証は、「組織のセキュリティの強化」と「UX の向上」という2つの大きなメリットを持つソリューションです。
リスクベース認証は、各企業独自のニーズを満たすために、ユーザー定義のリスク評価を提供することができ、継続的なリアルタイムのリスク評価を提供する AI 予測モデルを使って、システムを保護し続けることができます。
サイバーセキュリティシステムに弱点を残さず、リスクベース認証を導入して、より安全で合理的な運用を実現しましょう。
TeamPassword のリスクベース認証でビジネスを守ろう
リスクベース認証とは何か、その必要性はおわかりいただけたと思いますが、何から始めればいいのかお悩みの場合、まずはチーム用に構築されたパスワードマネージャーを使うのが良いでしょう。
インサイダーの脅威や第三者のデータ侵害からビジネスを守るために、パスワードマネージャーは、権限のないユーザーや悪意のある行為者からアカウントを守り、同時にチームのアクセスを効率化してくれます。TeamPassword のようなパスワードマネージャは、リスクベース認証と不正分析を使って、あり得ない場所から、通常とは異なるパターンで、または奇妙な時間にログインするユーザーを検証します。
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