OTP(ワンタイムパスワード)はビジネスにおいてどう機能するのか?
ビジネスの世界では、システムやデータへの安全なアクセスを確保することが極めて重要です。セキュリティを強化するために採用されつつある方法の1つに、OTP(ワンタイムパスワード)があります。そこで本記事では、OTP について、その用途や従来のパスワードなどの他のセキュリティ対策との比較、MFA(多要素認証)との違いについて見ていきます。さらに、安全なパスワード保管の必要性と OTP に関連する潜在的な脆弱性についてもお話します。
Table of Contents
OTP(ワンタイムパスワード)入門
OTP(ワンタイムパスワード)は、ログインまたはトランザクションセッションごとに一意のパスワードを生成するセキュリティのメカニズムです。ユーザーが変更するまで同じパスワードのままである従来のパスワードとは異なり、1回の使用と限られた期間のみ有効です。この性質により、OTP はある種のサイバー攻撃、特に攻撃者が送信中に傍受した認証情報を再利用する反射攻撃(リプレイアタック)に対してより安全です。
OTP は通常、ショートメール、メール、または Google Authenticator や Authy などの専用アプリケーションを介してユーザーに送られ、OTP の生成と検証は、多くの場合は TOTP(Time-Based One-Time Password)や HOTP(HMAC-Based One-Time Password)などのアルゴリズムに依存しています。
OTP の応用
OTP は、セキュリティを強化するために様々な場面で採用されており、一般的な用途としては以下が挙げられます:
- インターネットバンキングと金融サービス:多くの銀行では、オンライン取引の認証やオンラインバンキングサービスへのアクセスに OTP が使われており、例えば、顧客は送金確認のために SMS 経由で OTP を受け取ることがある。
- 企業のアクセスコントロール:企業では、機密性の高いシステムやデータへのアクセスを保護するにに OTP が使われており、例えば従業員は、企業ネットワークやクラウドサービスにアクセスする際に、通常のパスワードに加えて OTP を入力する必要がある場合がある。
- Eコマース:オンライン小売業者は、特に高額取引の場合、チェックアウト時に顧客の身元を確認するために OTP を使う。これにより、不正購入を防ぐことができる。
- メールとSNS:Google や Facebook などのプロバイダは、2FA(2段階認証)のプロセスの一部として OTP を使い、ユーザーアカウントに追加のセキュリティレイヤーを追加している。
- ヘルスケア:医療機関は OTP を利用して患者データを保護し、必ず許可された担当者しか EHR(電子カルテ)にアクセスできないようにしている。
- 行政サービス:政府のポータルサイトでは、税務申告、給付金申請、その他の機密性の高い市民データのやり取りなどのサービスへのアクセスを保護するためによく OTP が使われる。
パスワード・MFA・OTP の比較
パスワード
従来のパスワードは、最も一般的な認証形式であり、ユーザーはパスワードを作成して、それを使ってシステムやサービスにアクセスします。ただし、パスワードだけでは以下のような大きな欠点があります:
- 攻撃に対する脆弱性:フィッシング、キーロギング、データ侵害によってパスワードはが盗まれる可能性がある。
- 同じパスワードの使い回し:ユーザーは複数のサイトでパスワードを使い回すことが多く、それで漏洩のリスクが高まる。
- 「複雑さ」か「使いやすさ」か: 強力なパスワードはその分覚えにくく、(忘れないように)どこかに書き留めるなどの悪習慣につながってしまう。
MFA(多要素認証)
MFA は、以下のような複数の認証形式を要求することで、セキュリティのレイヤーを追加します:
- 把握しているもの:パスワードや暗証番号
- 物理的に持っているもの: スマートフォンやハードウェアトークンなどのデバイス
- 身体的に持っているもの:指紋や顔認証のような生体認証
MFA は、このような要素を組み合わせることで、セキュリティを大幅に強化します。たとえ要素が一つ侵害されたとしても、攻撃者はアクセスを得るのに他の要素が必要になります。
OTP(ワンタイムパスワード)
OTP は MFA の一要素であると考えることができます:
- 使用は1回限り(使い捨て):OTP は一度しか使用されず、時間制限があるため、反射攻撃のリスクが軽減される。
- 利便性:ショートメールやメールなど、使い慣れた方法でユーザーに送ることができる。
- 統合: OTP は、セキュリティを強化するために、よく従来のパスワードや他の MFA コンポーネントと一緒に使われる。
安全なパスワード管理と MFA の重要性
企業にとって、デジタル資産や機密情報のセキュリティは最重要事項であり、不正アクセスやサイバー脅威から守るには、強固な認証メカニズムの導入が非常に重要です。
従業員の MFA 利用
従業員は、多くの場合はサイバーセキュリティにおける最初の防衛ラインになり、従業員が MFA を確実に使うようにすることで、侵害のリスクを大幅に減らすことができます:
- セキュリティの強化:MFA で、パスワード以上のセキュリティレイヤーが追加される。
- コンプライアンス:多くの業界では、機密データを保護するのに MFA に対する規制要件がある。
- ユーザーの意識向上:MFA を使うことで、従業員にセキュリティの重要性を教育し、警戒する文化を育むことができる。
安全なパスワード保管
不正アクセスを防ぐには、以下のような方法でパスワードを安全に保管することが重要です:
- パスワードマネージャー:パスワードマネージャーを使って、各サービスごとに複雑で一意のパスワードを生成して保存するよう従業員に奨励する。
- 暗号化:パスワードが盗難から保護されるよう、強力な暗号化方法を使って保存されていることを保証する。
OTP の脆弱性
OTP はセキュリティを強化しますが、脆弱性がないわけではありません。致命的な弱点の一つに、配信方法(通常はメールまたは ショートメール)のセキュリ ティに依存している点が挙げられます。
メールとショートメールの安全性
メール
メールは OTP を送る一般的な方法ですが、確実ではありません。例えば、ユーザーのメールアカウントが侵害された場合、攻撃者はメールで送信された OTP を傍受し、保護されたアカウントにアクセスすることができます。この脆弱性は、メールの認証情報を公開するフィッシング攻撃やデータ侵害が多発していることを考えると、特に懸念されます。
例:2013年と2014年に発生した Yahoo のデータ侵害事件で、数十億のユーザーアカウントが影響を受けた。この漏洩したメールアドレスに OTP が送信されていれば、攻撃者に簡単に傍受されていた可能性があります。
ショートメール
ショートメールは OTP 配信のもう一つの一般的な方法ですが、セキュリティ上の重大な欠陥があります。主な問題の1つに SIM スワップがあり、攻撃者は携帯電話会社を騙して、被害者の電話番号を新しい SIM カードに転送させます。それが実行されると、攻撃者は被害者の電話番号に送信された OTP をすべて受信できるようになります。
例:暗号通貨口座を狙った SIM スワップ攻撃は数多く発生しており、例えば、2018年に注目を集めた事件では、ハッカーが被害者の電話番号を乗っ取り、OTP を傍受することで500万ドルを盗み出しました。
リスクの軽減
こうしたリスクを軽減するために、企業は以下のようにさらなるセキュリティ対策を実施すべきです。
メールセキュリティ
従業員には、メールアカウントに強力で固有のパスワードを使い、MFA を有効化するよう奨励しましょう。強固なパスワードであれば、推測されたり突破されたりする可能性は低くなり、MFA がさらなる保護レイヤーを追加してくれます。
また、従業員にフィッシングの手口を認識させ、サイバーセキュリティのベストプラクティスに関するトレーニングを実施しましょう。そしてフィッシングメールや悪意のある添付ファイルを検出してブロックできるメールセキュリティソリューションを使いましょう。
別の送信方法
Google Authenticator や Authy などの専用の認証アプリやハードウェアトークンなど、より安全な OTP の送信方法の使用を検討しましょう。このような方法は、メールやショートメールのような潜在的に安全でない通信チャネルに依存していません。
認証アプリはデバイス上で OTP をローカルに生成するため、送信中の傍受の影響を受けません。そしてハードウェアトークンは、複製や盗用がより難しい物理的要素を提供します。
継続的な監視
通常とは異なるログイン操作を監視し、潜在的なセキュリティ侵害をユーザーに警告するシステムを導入しましょう。この積極的なアプローチで、重大な損害が発生する前に不審な活動を検出して対応することができます。
また、ログインパターンを分析し、通常とは異なる場所やデバイスからのログインなど、不規則なログインにフラグを立てる異常検知システムを使いましょう。このようなシステムを包括的な SIEM(セキュリティ情報イベント管理)ソリューションと統合し、セキュリティアラートを一元化して紐付けましょう。
その他の推奨事項:
- 暗号化:メール、ショートメール、その他の方法のいずれで配信されるかにかかわらず、すべての OTP が送信中に暗号化され、傍受から保護されるようにする。
- OTP の有効期間を制限する:OTP の有効期間を短くして、攻撃者が漏洩した OTP を使える機会を最小化する。
- ユーザー教育:通信経路を保護し、潜在的なセキュリティ脅威を認識することの重要性について、定期的にユーザーを教育する。
- バックアップ認証方法:OTP の配信に失敗した場合に備えて、バックアップ認証方法を提供し、ユーザーが安全にアクセスできるようにする。
OTP の脆弱性を理解し、このような追加のセキュリティ対策を実施することで、企業は認証プロセスのセキュリティを大幅に強化して、不正アクセスから守ることができるのです。
パスワードの安全な取り扱いは依然として不可欠
ビジネスにおける OTP の意味と用途を理解することは、セキュリティの強化や機密データの保護の上で極めて重要です。OTP はセキュリティ上大きなメリットをもたらしますが、MFA や安全なパスワード管理の実践などの包括的なセキュリティ戦略の一環として使われるべきです。また、企業は常に警戒を怠らず、進化する脅威に適応するためにセキュリティ対策を継続的に評価していかないといけません。
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